人間の「したい」「やりたい」という欲求

欲求がなくなると、人間は途端に衰え、老化していきます。ですから、脳の罠にハマることなく、脳が本来持つこのパワーを取り戻さなければなりません。「脳の学校」代表の加藤俊徳氏

実際、脳のMRI画像を見ても、「◯◯したい」「××に行きたい」といった欲求があまりない人の脳は、活発な部分の範囲が徐々に狭くなり、使われている脳の回路が少なくなっていることがわかっています。

https://pub.a8.net/a8v2/A8ImageAction.do?eid=s00000021914&id=202109220107153250

つまり、私たちは、積極的に欲求を生み出すとともに、それをうまく消化し、満足度を高めるような生活を送るように心掛けなければならないのです。

欲求は情報がなければ生まれません。情報が増えれば増えるほど、それに合わせてやりたいことや見たいもの、食べたいもの、行きたい場所が増えていきます。つまり、欲求と情報とは本来、比例関係にあるわけです。

ところが、今の時代は情報だけが多すぎて、脳が処理できなくなり、両者のバランスが取れなくなってしまっています。とりわけインターネットやSNSには、私たちの欲求を満たすあらゆる要素が詰まっています。

https://pub.a8.net/a8v2/A8ImageAction.do?eid=s00000021581&id=202106231624413980

目や耳を通して直接私たちの脳に飛び込んできます。そして、私たちの脳は、ニュースやゴシップ、セール情報など、いったん目の前の面白そうな情報に飛びついてしまうと、それを消費し、飽きてはまた次の「何か」を追い求めて漂流することになります。

脳の使い方がどんどんアンバランスになり、脳の中に使われない部分ができてきます。その結果、脳の一部分の働きが鈍って、次々と現れる情報を情報として認識しなくなると同時に、欲求に対する「感度」が徐々に鈍っていきます。

現代社会を生きる私たちは、まず自分にとって「何が本物の欲求なのか」を判断するのが難しい。子どものころから周りと同じ考え方や行動をするように教育され、自分の気持ちに正直になれず、本来あってしかるべき「正当な欲求」まで抑圧してしまっています。

https://pub.a8.net/a8v2/A8ImageAction.do?eid=s00000020128&id=202107112037534515

ですから、あなたにとって必要な欲求、心地良い欲求、あなたの内面から湧き起こる「本物の欲求」を見極めなければなりません。

それ以上に大切なのが欲求を持続させること。いくつになっても、「あこがれのスターに会いたい」とか、「エベレストに登ってみたい」など、強く願う気持ちを持ち続けている。それこそが脳を成長させる原動力となるのです。

「本物の欲求」だからといって、欲求がひとつでなければならないということもありません。たとえひとつの欲求が実現できなくても、気持ちが途切れないように、欲求の選択肢は多数あったほうがいいのです。

歳を重ねたときに、どうしても実現したい欲求が目の前に見えていれば、しかもそれらがたくさんあればあるほど、まだまだあなたの脳は「成長している」ことになるのですから。

なぜ脳は、自動化しようとするのでしょうか。それは、人間が楽なほうに流れやすい生き物で、脳はより負担のかからない状態を選びたがるからです。つまり、脳には「怠けグセ」があるのです。

人は成長する過程で、脳が自動化するように徹底的に教育されます。計算問題や漢字の書き取りなどは、勝手に手が動いてしまうまで脳が自動化された(教育された)成果です。

https://pub.a8.net/a8v2/A8ImageAction.do?eid=s00000014490&id=202106231317485780

自動化というものはいわば、私たちが生きていくうえでの知恵であり、社会生活を営むうえで欠かせないものですが、それにあまりに頼りすぎるようになれば、脳はやがて成長を止めてしまうでしょう。

成人していろいろな経験を重ねると、自分が今持っている知識や経験を使えば、ほとんどのことが「なんとかなる」ようになってきます。すると、人にはそれなりの自信が生まれ、ものごとを「慣れ」た方法で処理しようとします。

ところが、慣れに任せていると、自動化された脳が勝手に働くだけなので、脳に新たな刺激を与えることができません。すると、使っていない脳の部分を開発することができず、結果として「新たな欲求」が生まれにくくなります。

毎日の生活の中から「慣れ」を排除していきましょう。

「いつも同じことをしているなあ」と感じることがあれば、少し違った方法でやってみる。あえて今まで経験していなかったことに挑戦してみる。「脱・自動化」です。

https://pub.a8.net/a8v2/A8ImageAction.do?eid=s00000021677&id=202105181636545430

40代後半を過ぎてもなお、「人生まだまだこれから」と自分に言い聞かせ、いくつになっても常に新しい経験をする。その姿勢が、みずからを若返らせ、さらには脳をイキイキとさせます。それが将来的な認知症の予防にもつながりますから、こんなに「いいこと」はありません。

脳は一生成長する器官です。その成長のカギを握るのは、胎児のときに得た神経細胞にあります。

一般に、脳の神経細胞は40代後半には老化が始まります。ところが、私たちの脳の中には、実は生まれたときから同じ状態を保ち、使われずに眠ったままの神経細胞が山ほどあることをご存じでしょうか。私はこれを「潜在能力細胞」と呼んでいます。

https://pub.a8.net/a8v2/A8ImageAction.do?eid=s00000022088&id=202104271533047490

「潜在能力細胞」は100歳を過ぎてもなお脳内に存在します。胎児のときに母親から受け継いだ細胞が、その間ずっと刺激を受けるのを待ち続けているのです。そして、新しい経験をしなければ、目覚めないまま放置されてしまいます。